ひじおりの灯2021

「今昔の灯」
草彅 裕 | クサナギ ユウ

 灯篭は光を灯す夜と、太陽に照らされる昼によって全く違う表情を見せ、祖先の霊を迎える目印として彼岸と此岸を繋ぐ願いも込められています。今作では、写真に内包される記録と記憶、機械と身体、過去と現在などの様々な両義性を灯篭に重ねることによって、どのように顕在化することが可能かを試みました。
 暗室作業によって月山和紙にプリントしたのは、これまで私が「ひじおりの灯」で作成した灯篭4基の記録写真です。1850年に開発され、日本では幕末から明治時代に主流だった鶏卵紙の写真印画法を月山和紙に施すことで、現代の写真がまるで遠い昔に撮影されたようにも見えます。和紙に染み込ませた卵白液の上に、感光剤である硝酸銀を刷毛で塗ることにより、個人の身体行為が機械によって生み出された写真のメディウムとして加わります。ここで硝酸銀溶液や卵白液を指して用いる写真の「メディウム」とは、「媒体」の他に「中間」や「霊媒」の意味を持つ語でもあります。
 張り替えによって今では存在しない灯篭も含め、灯篭にプリントされた灯篭を見るとき、「過去の灯篭」は「現在の灯篭」となり、またその逆の存在でもあります。昼と夜、彼岸と此岸を結ぶ灯篭の光に写真が重なり、写真灯篭ならではの視覚と意味の倒錯的な交差が生じています。
 

制作者プロフィール

草彅裕
秋田県仙北市出身 
東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科修了
生まれ育った秋田県内の自然や風土を、写真でしか捉えることのできない不可視の「瞬間と循環」を主題として撮影。秋田を拠点に国内外で多数の個展、グループ展に参加している。
受賞
2019年 キヤノン SHINES 入賞(梶川由紀選)
2012年 ペンタックスリコーフォトコンテスト準特選
2010年 キヤノン 写真新世紀 佳作(蜷川実花選)
2007年 コニカミノルタ フォト・プレミオ入賞
2005年 APA公募展文部科学大臣奨励賞
出版
2016年 写真集「SNOW」FOIL出版
個展
2021年 「水の粒子」(ギャラリーブルーホール/秋田)
    「N.E.blood 21 vol.77 草彅裕展」(リアス・アーク美術館/宮城)
2020年 「水の粒子」(Cyg art gallery /岩手)
2019年 「流転の水系」(仙北市立角館平福記念美術館 /秋田)
2018年 「ACID WATER -流転の水系-」(キヤノンギャラリー/銀座、大阪、名古屋)
2016年 「SNOW」(コニカミノルタプラザ/新宿)
2007年 「arkh?~水と太陽~」(コニカミノルタプラザ/新宿)
その他多数
グループ展
2021年 「200年をたがやす」(秋田市文化創造館/秋田)
2020年 「山形ビエンナーレ2020」(東北芸術工科大学/山形)
2019年 「The Narrative of the Shore」(CASE Space Revolution/バンコク)
2018年 「夜と美術」(秋田県立美術館/秋田)
2014年 「ネイチャー・イン・トーキョー」(KYOTOGRAPHIE 国際写真フェスティバル 有斐斎弘道館/京都)
その他多数
 


【ウェブサイト
「草彅裕official」https://yu-kusanagi.com