ひじおりの灯2021

「三世代の容れ物(木地師、佐藤誠次に想いを馳せて)」
増子 博子 | マスコ ヒロコ

佐藤誠次(1902-1962)は肘折に縁が深い木地師だ。こけし界のピカソなどと言われる丑蔵や、ブラジルへ新天地を求めた三治を兄に持つ。誠次は真面目な性格で、数少ない誠次作のこけしには、その性格が現れているという。
さて、肘折に滞在中こんな話を聞いた。
「肘折保育所では、赤ちゃんから高齢者まで参加する運動会がある。」
「“宝釣り“って種目は、紅白幕の向こうからおじいちゃんおばあちゃんが釣竿を伸ばして宝を釣るの。宝は百均なんかで買ってきたもの。それがいいってリクエストされたりする。」
「夫婦が男女に分かれて綱引きもする。保育園の先生がみんな女性側に付くから、無敵状態。」
 そんな話を聞いた時ふと、誠次含む木地師たちが淡々と挽いた、世代を超えて使われる器たちが、肘折という大きな容れ物と重なって見えてきのだった。
 木地師の取材では横山仁エ門商店を訪ねた。店には以前木工所があった時の名残として木地職人の彫りかけのお盆が展示されている。約80年前のものだという。木を丸く挽いた盆に、彫刻刀で小松淵の景色が彫られている。実際自分でも彫ってみると簡単にはいかない。繰り返し繰り返しの作業で、体に染み込んだ景色だ。今回の灯籠は、そんな景色もうつし出せればと、木版画で制作した。青みの強いエメラルドグリーンの色は、肘折を思うときに浮かぶ春の銅山川の“笹濁り“と、眩しい里山の緑が合流した色をイメージしている。
 
 

【消灯】

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【点灯】

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【音声解説】

制作者プロフィール

1982年宮城県生まれ。2008年宮城教育大学大学院修了
盆栽をテーマにした作品、日々のドローイング「側(カワ)の器」、
住む土地土地で出逢ってしまうもの、人などを通し考えながら制作を続けています。
2007年から主にGallery Jin Projects(東京)、ヨロコビto gallery(東京)、
Studio J(大阪)、Gallery MoMo(東京)、Cyg art gallery(盛岡)、リアスアーク美術館(宮城)などで個展。
2007年「第28回グラフィックアート『ひとつぼ展』」ガーディアンガーデン (東京)
2010年「群馬青年ビエンナーレ2010」群馬県近代美術館(群馬)
2011年「ゲンビどこでも企画公募2011」広島市現代美術館エントランスホール(広島)
2018年「VOCA展」上野の森美術館(東京)
等グループ展に参加
2007年 「トーキョーワンダーウォー2007」トーキョーワンダーウォール賞 
2010年 「Toyota Art Competition」 優秀賞
 
 


【ウェブサイト
https://www.bonsa1.org