閑散期となる冬の肘折温泉では、使用する源泉に応じて組分けされた、女性だけが参加できる地蔵講が催される。湯を守る地蔵尊に感謝を捧げる一方で、日頃きびきびと働く女性たちが一息つく場でもある。
部屋の一隅には、月ごとに各家庭が持ち回りをする、仏像や仏具が祀られる。和やかな会話の最中、祈りの時間は神妙に訪れ、居住まいを正した女性たちは掛け軸の御詠歌を詠唱する。その意味や作法は、時を経て薄れてきているのだとも聞いた。それでも冬季になると、受け持ちの家庭では地蔵尊を祀り、集う女性たちに振る舞う料理を準備する。
継承されていくものごとは、いつでも日々の重なりと、そこに暮らす人の日常から紡がれている。
タイトルは御詠歌の一節を改変した。
「よをすくう いでゆをめぐむ ひじをりの ぢぞうぼさつは あらたなりけり」
【消灯】
【点灯】
【音声解説】
制作者プロフィール
美術家/広島市出身、秋田市在住
1994年広島市生まれ。
広島市立大学芸術学部美術学科日本画専攻卒業。
秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科修了。
失われるものごとへの記憶の想起やその寓意性に着目した制作を行う。
2018年度第3回FujisatoREC特別賞受賞。
2020年より秋田市にオルタナティブスペース「オルタナス」を有志と立ち上げ運営する。